UVレジンを加工してみる

 今回はUVレジンにCO2レーザーを照射するとどうなるのか?です。



 最近たまに問合せを頂くのが「レジンは加工できますか?」というもの。
昨今、UVやLED、エポキシのレジンでブローチやイヤリング、髪留めなど装飾品の製作やレジンを使用してのアート制作が流行っている加減もあり、その加工手段としてレーザーは有効か?という疑問を持たれてのことだと思います。
がしかし、正直、何でもかんでもデータの蓄積や経験があるわけでもなく「溶けるもしくはカット出来たとしても溶着する、カット断面が黄変する、などになる可能性が高いです」という、アクリル以外の樹脂系でよくあるパターンの加工結果例をお話しするに止まっていました。
 なので今回は、実際やるとどうなるのか?を見てみたいと思います。

 今回用意したのはクラフト用UVレジン液を取り扱う会社では有名処と言われる(web調べ)3社 各1種類 計3種類のUVレジン液です。
それぞれ25mm四方の型枠で2~3mmの厚みのプレートを作成しテストに使用しました。
ちなみに「2~3mmの厚み」は1枚のプレートの中の薄い部分(中央辺り)と厚い部分(縁周り)です。
縁周りは出来るだけ同じ厚みで平らになるようヤスリで削りました。


●使用レーザー機その他
レーザー機:Speedy300 CO2 60w
レンズ:1.5inch
ノズル:細口ノズル
その他:不織布マスク、ナイロン手袋、アルコール入りウェットティッシュ、室内換気

●注意事項
レジン液の使用方法はレジン液のパッケージや封入されている説明書を熟読し、それに従います。
レジン液で加工物を作成する際、硬化の折に有害なガスが発生するため、マスクや手袋、ゴーグルなどの使用、十分な換気が求められています。
レーザー機での加工時も同じ様に対策を行います。


●結果 カットについて
カット断面
カット断面(写真それぞれ左脇1か所)

 3種ともにカット可能なレーザー出力は変わらず、大きな溶けや溶着なども無くカット出来ました。
3種それぞれパッケージ裏などに書かれている成分表記は「アクリル系光硬化樹脂」「アクリレートプレポリマー」「特殊アクリレート樹脂」と異なりますが、それは大きく影響しなかったようです。
また上写真中央のプレートについては黄色いUVレジン液を使用しましたが、色(着色料)による出来具合の差も無いようです。
が、カット中およびカット終了後、レーザー機のフタを開けた時の刺激臭が強く、加工対象物からも強い臭いが。
そしてカット断面とその周囲にはベタベタが残り、断面はよく見ると黄色く変色(黄変)していました。

カット断面の黄変(写真それぞれプレート左脇)

 上写真中央のプレートはプレート自体が黄色い色をしているので見辛いですが、3種ともカット断面が黄色く変色(黄変)しています。
カット断面や周囲のベタベタはUVライトを20分程照射しても変わらずでしたが、丸2日放置していると完全に無くなっていました。
特に跡形は残っていませんでしたが、窓に近いところに置いていたため硬化したものと思われます。
また、このベタベタはアルコール入りのウェットティッシュで拭きとることが出来たほか、拭き取り後は黄変もあまり目立たなくなりました。
UVレジンの硬化後の耐熱温度は70~80度らしい(web調べ)ので、これらの事からこのベタベタはカット中溶けたUVレジンが付着したものだと推測できます。

●レーザーパラメーターについて
上記で説明したカットは
パワー:50 スピード:0.4 HZ:20000 カット回数:1回 
でしたが、低い出力設定で複数回カットを行うとどうなるのか?も観てみました。

カット断面(写真それぞれ左脇1か所)

パワー:50 スピード:1.2 HZ:20000 カット回数:3回
パワーを50で据え置き、スピードを3倍の1.2、繰返し回数を3回に設定してカットしました。
スピード:0.4 カット回数:1回の時と同様、カット終了後の臭い、カット断面とその周囲のベタベタは残りましたが、カット断面の黄変は目立ちませんでした。
このことから、高出力1回で完全にカットするよりも、低出力で複数回に分けてカットを行った方が断面がキレイに仕上がると言えそうです。

●彫刻について
次に彫刻を行ってみました。
こちらもカット同様、アクリル以外の樹脂の場合、低い出力でも溶けて文字や線が潰れてしまう、もしくは彫刻出来たとしても彫刻溝(凹)が黄変することが多いですが。



●パラメーター
パワー:60 スピード:30 PPI:500 彫刻回数:4回
カットの時、出力を高くして少ない回数で加工を行うと黄変したので、彫刻は初めから出力を少し控えめにし彫刻繰返し回数を増やしてみました。
出来た溝(凹)の深さは爪の先が引っかかる程度です。
黄変は見られず、カットの時カット断面やその周辺に残ったベタベタ(溶け)が今回も彫刻を行った周囲や凹みの中に薄く残りましたが、これもアルコール入りのウェットティッシュで拭取ることが出来た他、放置しておくと固まって気にならなくなりました。



彫刻部分(凹)を拡大してみると写真/右端のみ「A」の外周(縁)のガタガタが他よりも粗かったり、横向きに筋が入っているのが解りますが、こちらは他の2種に比べ若干ベタベタが多く残っていたので、溶けたものが塊や筋になって残ったものかと思います。
カット時には大した差は見受けられませんでしたが、他の2種から比べると少し溶けやすいようです。


●まとめ
 硬化時の有害なガスの発生やカット時およびカット直後の強い刺激臭があることからお薦めは決して出来ませんが、加工できなくはない素材であることは解りました。
低い出力で数回に分けて(繰返し加工で)加工を行った方が断面や溝(凹)の黄変が抑えられキレイに出来上がるほか、加工を行うとレーザー照射部分が溶けるものの、硬化した状態では結構硬いようで、今回は60W機を使用しましたが、30W機で加工を行うと少々時間が掛かりそうです。

ちなみに。
ついでにUVレジンの間にUVレジンとは異なる物質が挟まっている場合や厚手のもののカットも行ってみました。



写真/左から
1,約4mm厚、黄緑色、UVレジンを硬化させる際にホログラムを挟み込んだもの。
2,約4mm厚、透明、UVレジンを硬化させる際にアルミ箔を挟み込んだもの。
3,約10mm厚、青紫と薄青の2層、UVレジン(薄青の層)を硬化させる際にアルミ箔を挟み込んだもの。

1のホログラムは100均で購入したラッピング用袋(PP)の切れ端、2、3のアルミ箔は食品用アルミホイルです。

1,先と同じパワー、スピードで繰返し6回
UVレジンのみよりも時間は掛かりましたが特に問題なく切れました。

2,パワー 100、先と同じスピードで繰返し10回
弊社のCO2レーザー機では平常金属はカットすることが出来ず、アルミホイルに至っては熱の伝導が良く分散されてしまうため、薄い箔なもののカットは出来ないのですが、全周囲がUVと密着していたため熱の分散が抑えられたのか、UVレジン、アルミホイルともにカット出来ました。

3,パワー 100、先と同じスピードで繰返し30回
アルミホイルまでのUVレジン(9mm程)は何とか切れましたが、アルミホイルとアルミホイルから下(底部分)のUVレジンは切れず、残ってしまいました
2と同様UVレジンとアルミホイルは密着していましたが、先に切れたUVレジン(アルミホイルより上部分)が熱で溶けアルミホイルからはがれてしまい、そもそもアルミホイルのみでは切れないので切れずに残ったようです。



1,2,3それぞれのカット断面。
それぞれ左脇が底面、右脇が上面です。

1,左脇から約1mm右あたりにホログラムがあります。
ホログラムはPPのため6回繰返しでカットは出来たものの、加工台(金属製ハニカム)からのレーザーの反射と熱でUVレジンが溶け、左脇(底面)あたりから中央辺りにかけて波状の縞が出来ています。

2,左脇から約1mm右あたりにアルミホイルがありますが、アルミホイルを挟んで左部分と右部分でカット断面が全く異なっています。
左部分がつるりとキレイなのに比べ、右部分は上面(右脇)からレーザーを照射しているためアルミホイルから上向き(右向き)に反射した熱でUVレジンが溶け、割れたような凹みが出来ています。

3,約10mmをカットしようと30回繰り返したせいで黄変が酷い(青紫と薄青が緑と黄色に見える程度)上に結局アルミホイルと底部分のUVレジンは切れず、UVレジンが溶けアルミホイルからはがれて終了しました。

 他の材料同様、異なる材料の貼り合わせで層になっているものや混入しているものは上手くカットできないようですが、UVレジンのみであれば10mm程の厚みがあるものでも時間を掛ければカットできるようです。


 以上、いろいろテストを行ってみましたが、塩ビ系のような発がん性のある煙や臭いではなく、十分な換気をしていれば問題ない程度のガスのようですが、レーザーを照射すると強い刺激臭が発生し、人によりレジンアレルギーを発症するのは確かなようなので、お薦めはしません。
 しかし、加工できなくはない素材で、カットの後ヤスリ等で磨いて丁寧に仕上げるのであれば断面も問題なくなるので、「やるだけ無駄」な素材ではないことは解りました
φ(..)メモメモ



 


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