カットのトラブル解消

 今回は『加工日記』からのちょっとした余談、レーザー機でカットする際のトラブル解消方法について。


 先日、某ユーザー様から「5mm厚のMDFボードをレーザーカットしているが、上手く切れない」とご相談を受け、写真と実際使用されている加工用データを頂きました。

MDFボード カット後 矢印で示した以外にも複数の切り残しが伺えます

頂いた写真を見ると、確かにカットしたラインが途中途中で途切れ途切れになり、きれいに切抜けたとは言えない状態です。
こういう場合、先ずはpowerが低い、speedが早いなどパラメータの値の過不足を疑いますが、 SP500 60w機使用でpower 100、speed 0.65、PPI 4500 と、特に過不足を感じる値での加工ではないようです。


プロセス 赤のカット

 なので、次は加工用データのチェックをしてみることに。
すると。





頂いたデータはIllustrator(.ai)ファイルだったのですが、元データはオートCADで作成したデータをIllustratorで開き、レーザーカット用データにしたものだそうで。

検証のため、開いたデータをクリッピングマスク解除(※1)してみると・・・パスがバラバラに( ゚Д゚;)!!
(上写真右側参照。クリックすると、パスが寸断されていて本来クローズパス図形であるはずの図形の一部のパスしか選択されません)

・・・そう。
オートCADやベクターワークスで作成したデータをIllustratorで開くと、パスが寸断されバラバラになる(※2)のです。
これをそのままレーザー機でのカットデータとして使用すると、ソフトがカットラインをバラバラに認識し、ヘッドが右や左、奥や手前、短いラインをあっちこっちに点々と引きながらカットしていきます。
それ故に、カット動作が終了しても所々小さな切り残しがあるなど『上手く切れない』結果になり、時間も余計に掛ることになるのです。

 と言う訳で、某ユーザー様の「上手くカット出来ない」原因は『Illustrator上でのパスがバラバラだったせいでjobcontrolがカットラインをバラバラに認識し、切り残しが出来るせい』でした。

なので、この場合、このバラバラのパスを各図形毎に結合させるか、または、jobcontrolに『短いパスの集合体』ではなく『クローズパス図形(連続した1本のパス)』として認識させ、スムーズに動作させる必要があります。

 前者の『バラバラのパスを各図形毎に結合させる』は、Illustratorの上部のツールバー『オブジェクト』より『パス』→『連結』で行います。
 この場合、複数のクローズ図形に関する複数のオープンパスを一度に選択・結合すると、本来とは異なった位置で結合されたり図形が崩れたりする要因になりますので、各図形毎に細かく選択・結合して行きます

 後者の『jobcontrolにクローズパス図形(連続した1本のパス)として認識させる』は、Illustratorのデータはそのままで使用し、jobcontrol内でソートを掛けます
 ソートは、使用するjobを選択し右クリック(または上部ツールバー『テンプレート』をクリック)→出てきたメニューの中から『カットの最適化』を選択→スタートボタンをクリック(表示されている設定を変える必要は特にありません)→完了後『閉じる』をクリック で出来ます。
ソートされたjobにはjob名の後ろに『_sorted』と表示され、元のjobは画面右側のjob一覧に戻ります。


ソート完了後


但し、ソート機能はjobcontrol ver.9以降に追加された機能であり、且つjobcontrol ver.9以降を『エキスパート』でご使用頂いているユーザー様のみ使用可能です。
(『アドバンス』でご使用のユーザー様は表示されません)

ちなみに、『エキスパート』使用の有無はプリンターの『環境設定』内の『関して』で確認できます。
『アドバンス』から『エキスパート』へのグレードアップについては、弊社サポート担当までお問合せください(^_^)b





※1・2 開いた直後のデータは画面に表示されている複数の図形がすべて一纏めにグループ化されていますが、上部のツールバー『オブジェクト』より『クリッピングマスク』→『解除』することでパスが個別に選択出来る(パスがバラバラになる)ようになります。

※この記事は加工写真・カット用データをご提供頂きましたユーザー様にご了承を得て作成しております。無断転写・掲載は致しませんので、その旨ご了承ください。








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