鏡に彫刻の、後処理 ~着色について~

 今回は鏡を裏から彫刻した場合の後処理について考えたいと思います。

 鏡を裏面からレーザー彫刻した場合、レーザーを照射した部分の鏡の塗装は剥がれ、ガラスが見える状態になります。
そうなるとガラスの部分は透けて向こうが見える状態になりますので、額装し飾る時などは後ろ側に紙を入れるか塗料で着色する必要があります。


 そこで考えるのは、塗料で着色しようとした場合、何を使用すれば良いのか?です。
 
 今回私は、彫刻を行った部分にポスターカラー(不透明水彩えのぐ)の白色を塗りました。
 彫刻した部分全体にまんべんなく、乾いた後透けて見えないように厚塗りで。



 塗装をした事で猫の細かな毛並みのニュアンスや陰影がはっきり見えるようになり、キレイに仕上がりました。

しかし。
 完全に乾かすため翌朝まで放置し、改めて見てみると。
昨日は無かったはずの黒い点々が。


 緑色の矢印で示した他にも複数の黒い点々が伺えますが、これは錆(サビ)です。
ポスターカラーを塗った部分が腐食し、錆が浮き上がっていました。

 ちなみに上記ポスターカラーの他、アクリルカラー(透明樹脂えのぐ)も試しに塗ってみましたが、結果は同じ。
こちらも翌日には錆が浮きました。


アクリル絵の具 黒色で裏面から着色
赤い○で囲っている部分が腐食によって表面に浮き上がったサビです

 何が原因かを考えますと、水(水気)が原因らしく、ポスターカラーもアクリル絵の具もチューブから出したまま、ドロドロの粘り気のある状態であればまだ大丈夫なようですが、水分が多いサラサラ、ベチャベチャした状態で長く放置するとその水気で鏡が腐食するようです。

 後から思い返してみると、私が塗ったポスターカラーは長い間使用しておらず、チューブ内で水と顔料が分離(沈殿)していました。
 それをよく混ぜずに使用したので、チューブ内以外の水は混ぜていないものの粘り気の少ない、水気の多いものでした。
 また、アクリルカラーについては、こちらは分離(沈殿)していないものをチューブから出したままの状態で使用しましたが、使用した筆は、水道水で洗ってすぐ、適当に水を拭取っただけだったので、筆から出てきた拭き残りの水が混ざったのが原因のようです。

 そもそも鏡(一般的なもの)とは、銀またはアルミをガラス板に蒸着塗装し、銀の場合、銅と上塗りの塗料を、アルミの場合、上塗りの塗料のみを塗装し出来ているものなので、お風呂場など湿気の多い場所に長く置いてあると縁回りから錆びが浮いてくるのは、長期にわたり湿気を吸って上塗りの塗装から浸透し、鉄の部分(銀、銅、アルミ)を腐食させるため、のようです。
 また、水道水(上水)に含まれる塩素も影響するようで、鉄の部分に直接触れると酸化してしまうようです。(※1)

 なので、レーザーで彫刻加工を施した時も同じ。
レーザーを照射し鏡の塗装部分を削って剥しているので、水分の多い塗料を塗り長時間放置すると、その水気で鉄の部分が腐食し錆が浮くことになるようです。


 ポスターカラーもアクリルカラーも本体容器内部をよく混ぜ合わせ、出来るだけ水分が少ない状態で塗るのが良いようですが、ポスターカラーは粘り気の強い濃い状態で厚く塗ると、顔料の粒子が粗いため乾いた後ひび割れが出来ます。

ポスターカラー 白色で着色
乾くと、厚いところを中心に全体的にひび割れが出来ました

 その点アクリルカラーはアクリル樹脂が入った絵の具ですので乾いた後も粘りが持続し、ひび割れず、完全に乾くと耐水性にもなります。

 結果、今回使用したポスターカラーとアクリルカラーでは、アクリルカラーの方が適していることが解りました。 
 
 また、アクリル絵の具の他、水性エナメル、水性ペンキ等も主成分(アクリル合成樹脂、顔料、水)や使用方法は同じようですので、使って良いかと思います。(※2)

左:水性エナメル(ミルキーホワイト)、右:アクリルカラー(白)
写真では解りにくいですが、乾燥後アクリルカラーはムラ(筆の痕)が目立ちます

 ちなみに水性エナメル、水性ペンキはアクリル絵の具よりも不透明(アクリル絵の具は透明アクリル樹脂)な上、粘り気が強いので厚塗りには適していると思いますが、その分乾きが遅いようですので時間に余裕を見た方が良さそうです。
(ドライヤー等で無理に早く乾かすとひび割れが生じる場合があります。様子を見ながら行ってください)



 


※1・・・参考:【よく分かる鏡の世界】
http://www.ywkagaminosekai.com/kagami/k-seihou.html


※2・・・今回使用した塗料はすべてチューブまたは瓶入りを筆で塗っています。
スプレー式は水分が多いと思いますので、試し塗りをし、錆が出ないか確認後の使用をお奨めします。




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