ガラス彫刻に水が必要なワケ ~その1~

 今回はガラス彫刻の紹介をする度に書いている、『紙(半紙、ペーパータオル)と水使用』の訳について、です。

 前々回の更新6月8日掲載『ガラスへの彫刻 ~ペーパーについて~ 』ではペーパータオルに代わる第3の紙、習字用半紙の考案をするなど、ガラス彫刻は薄い紙を水で貼って行う旨を度々書いてきましたが、 そんな中でたまにお問合せ頂いているのが、「ペーパータオルが何処で購入できるのか?」の他に、

「そもそもペーパータオルの水張りは必要なのか?」

という事でした。
 なので今回は紙の水張りを行っていない場合と行った場合との比較を基に、その必要性について書いてみたいと思います。


 まずは透明ガラス板に同一データの彫刻を同パラメータで 紙の水張り 無し、有り 両方で行った写真から。


 上段が紙の水張り無し、下段が紙の水張り有り。

※上・下段ともに、同じ段の中で『あ』の色味が少しすつ異なって見えるのは撮影時の光の反射の加減です。下記説明とは直接関係ありません。

 上段の方が白い色が薄い(灰色に見える)、透明感がある感じ、下段の方が上段に比べると白い色が濃い、透明感が無いように見えます。
 そして上段は手で触れるとザラザラ感が強く、彫刻痕を爪で引っ掻くとガラスの表面が細かく剥がれるような感覚(手に塵状のガラス片が付着する)がありますが、下段は少しザラザラ感はあるもののガラスの表面が剥がれるような感覚はありません。

 また、写真を彫刻すると上記のような現象がもっと顕著に表れます。


 上写真↑も同一画像(子どもの鼻から上部分の写真)データ、同一パラメータで透明ガラス板に、上が紙の水張り無し、下が紙の水張り有りで彫刻を行ったものです。

 下側(水張り有り)がレーザー照射した部分が全体的に白色が濃く、目や眉の形、髪の雰囲気などもわかる程度にメリハリがあるのに対し、上側(水張り無し)は全体的に下側と比べると白色が薄く、ぼんやりとメリハリのない感じ、指で触れた感触も彫刻痕はザラザラパリパリした状態です。

 これはどういう事か?というと。


 ↑この写真は上記で彫刻した内容『あ』の右上部分あたりをCCDカメラで撮影したもの。
 左が紙の水張り有り、右が紙の水張り無しです。

 右の写真(水張りなし)は彫刻痕のささくれ立った感じが強く、ひび割れの目が粗く不揃い、それに対し左の写真はひび割れの目が細かく形が揃っている事が確認できます。
 
 この彫刻痕のひび割れの大きさ(目の粗さ)やその形状により、触った時のザラザラ感の強さや
ガラスの表面が剥がれる感じが起こり、白っぽいか透明感があるかなど見た目の違いにも表れているのです。
 
 で、これが行き過ぎる(紙の水張り無しで高出力・低速度で彫刻を行う)と


 ガラス表面のひび割れてささくれ立った部分が浮き上がり大きく剥がれ落ち(『気』の横棒部分、『で』の上半分)、見た目が残念なだけでなく、色入れを行ってもきれいに仕上がらない状態に。

 ちなみにこの現象は、紙を水張りしていてもその紙が乾いてくると同じように起こりますので、
そうならないためにも早め早めに水を補給し、紙とガラスが十分に濡れている状態で彫刻を行うことが重要です


 次回 『ガラス彫刻に水が必要なワケ ~その2~』 では、紙の水張りを行わずに彫刻を行った場合の危険性について書きたいと思います。











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