今回は磁器タイルに彫刻を行います。
まずはデータから。
データは2種類用意しました。
以前のブログでも紹介したように当社のCO2レーザー加工機ではガラスや石の切断は出来ませんが、ごく浅い傷がついた程度の彫刻であれば可能(※)です。
同じように、陶磁器その他焼き物も切断することは出来ませんが、彫刻は可能です。
そこで今回は、市販品の磁器タイルに彫刻し、見た目や溝(凹)の深さなどどういう出来上がりになるかを見てみたいと思います。
今回は一般的な陶器の骨壺や位牌をイメージし彫刻デザインやアイボリー色のタイルを用意しましたが、イメージを膨らませ他分野まで可能性を広げる意味で、平面の磁器タイルを使用し、複雑な図柄の全面彫刻、複数色を使用しての色入れを行ってみたいと思います。
※ガラス、石への彫刻についてのページはこちら
双方ともにcorel DRAWで作成しましたが、左のものは柄部分のパスがとても多く、JC(ジョブコントロール)に移行する際時間がかかる他、JCに移行されない等のエラーの要因ともなるため、文字以外の部分をBMP(ビットマップ)に変換しました(★)。
赤の四角が今回彫刻するタイルの実寸です。
右のものは赤四角の中にすべての図柄が収まっているのに対し、左のものはタイル全面に彫刻を行いたいので、赤の四角から少しはみ出す状態でデータを作成しました。
★『BMPに変換』は『=画像に変換』なので、彫刻にのみ有効な方法です。
カット線をBMPに変換するとカット線ではなく画像として認識されるようになり、また、一端BMPに変換を行ってしまうと再びカット線に戻すことは出来なくなってしまうため、注意が必要です。
◆用意するもの
・磁器タイル(ホームセンターなどで販売しているもの)
・水性塗料(ペンキ、アクリル絵の具など。今回は金と黒を使用)
・柔らかい布(加工終了後、加工時に出た粉を拭き取ります。無くてもOK)
◆使用レーザー機その他
レーザー機:Speedy360 CO2 80w
レンズ:1.5inch
◆パラメーター
パワー 90 スピード 20 PPI 1000 エアーアシスト:ON Passes:4(★)
・水性塗料(ペンキ、アクリル絵の具など。今回は金と黒を使用)
・柔らかい布(加工終了後、加工時に出た粉を拭き取ります。無くてもOK)
◆使用レーザー機その他
レーザー機:Speedy360 CO2 80w
レンズ:1.5inch
ノズル:太口
DPI:500
加工モード:標準
ハーフトーン調整:ディサ生成
DPI:500
加工モード:標準
ハーフトーン調整:ディサ生成
◆パラメーター
パワー 90 スピード 20 PPI 1000 エアーアシスト:ON Passes:4(★)
※目安としてご覧頂き、ご使用のレーザー機のw数や実際に加工を行う製品(加工対象物)により調整してください。
・wの換算方法(例:80wでの加工を60wのレーザー機で行いたい場合)
80w×50%=0.50×80w=40w(約40w)=60w×0.67(0.666)=60w×約67%
(60w×▲%=0.▲×60w=40w 0.▲=40÷60)
=80wでパワー50%の場合、60wで約67%
※あくまでも換算です。微調整はその都度行ってください。
・wの換算方法(例:80wでの加工を60wのレーザー機で行いたい場合)
80w×50%=0.50×80w=40w(約40w)=60w×0.67(0.666)=60w×約67%
(60w×▲%=0.▲×60w=40w 0.▲=40÷60)
=80wでパワー50%の場合、60wで約67%
※あくまでも換算です。微調整はその都度行ってください。
★Passes:4(4回繰返し彫刻)のワケ
上写真内 上段が彫刻を4回繰り返したもの、下段が10回繰り返したものです。
また、上下段ともに左が彫刻のみを行ったもの、右が彫刻後金色の塗料で色入れを行ったものになります。
上下段ともに同じパラメーターを使用し彫刻回数のみを4回と10回に分けました。
4回の方の彫刻溝(凹)は爪が少し引っかかる程度でパール色のような白っぽい色、滑らかな状態、10回の方は彫刻溝(凹)は4回よりも深いですが黒っぽく、凸凹した状態になっています。
この差は、釉薬(ゆうやく)の部分までしか彫れていないか、その下の坏土(はいど)まで彫ってしまっているかによるもので、4回の方は釉薬層までのためタイルに着色された色が残って白っぽい色に(※)、一方、10回の方は着色の白色がなくなってしまい、その下の坏土が焦げて黒っぽい色になった状態になります。
また、その彫刻溝に色入れを行うと、4回の方も10回の方も問題なく色は入りましたが、4回の方はキレイな金色になったものの、10回の方は彫刻溝が黒っぽい上に凸凹しているため、くすんだ金色で凸凹の感じもあってキレイとは言いにくい仕上がりになりました。
その他、写真はありませんが、今回のパラメータ設定の出力(パワーとスピード)よりも高い出力(パワーを上げスピードを下げる)にし、彫刻回数を1回に減らした場合も、上記の4回の方と同等程度または少し深めの彫刻溝が出来ましたが、黒っぽくはないものの凸凹がありキレイとは言いにくい状態になりました。
これは釉薬に含まれる珪素(けいそ)によるもので、比較的低い出力で複数回繰返し彫刻を行った方が珪素が良い具合に溶け、滑らかな凹でパール色のように見える状態になるようです。
これらのことから、彫刻回数を増やし彫刻溝を深くすることも、加工時間を短縮させるために出力を上げることも、見た目のキレイさを求めるのであればやめた方が良さそうと言えます。
ただし、今回の加工は弊社既存のSpeedy360 CO2 80w機で行った結果ですので、細かなパラメータ設定は実際にご使用になる機器に合わせて試彫刻を行い、彫刻溝の深さや出来上がりを確認しながら設定してください。
※今回はアイボリー色のタイルを使用しているため彫刻溝(凹)も白っぽい色になっています。その他の色のものを使用した場合、白っぽい色の凹にはなりません。
加工に進みます。
■加工イメージ動画
★撮影のため、レーザー機のフタ(上面パネル)を開けています。
実際に加工を行う際は必ず閉じて行ってください。
★加工中は必ずレーザー機の傍に居るようにし、目を離さないでください。
彫刻のみでも落ち着いた趣がありお洒落ですが、色を入れることによりメリハリができ、上写真の方は重厚感が、下写真の方は可愛らしい雰囲気が出ました。
色入れはどのようにするのですか?
返信削除吹き付けて、拭き取る(溝のところだけ残る)でしょうか?
回答遅くなりまして申し訳ありません。
削除私はいつも水性塗料を筆で塗っています。
マスキングテープで色入れ不要な部分をカバーし、色を塗った後、紙やスクレーパーなどで不要な塗料を取り除き、少し乾いた時にはみ出た部分部分をある程度拭き取ります。
その後、溝の中まで乾燥したら水と柔らかい布で全体を拭くと溝の部分だけが残ります。
(色が薄かったり気泡などで欠けた部分があれば同じことを繰り返します)
「不要な塗料は塗ってすぐに取り除いておく」「乾燥してしまう前にはみ出た部分をある程度拭いておく」がポイントです。