ステンレス製マグカップにマーキングする ~その2~

 今回はステンレス製マグカップへのマーキングをspeedy100以外の機種で行う場合の方法を紹介します。

 前回紹介したステンレス製マグカップへのマーキング方法はspeedy100でのみ有効な方法でしたので、今回はspeedyシリーズ 300~400を使用した場合の加工方法と、speedyシリーズ 100~400共通で出来る奥の手を紹介したいと思います。


 ロータリーアタッチメントの部品に取り付けるアクリル板とその取り付け方法はspeedy100の時と同じですので今回は割愛し、レーザー機の説明を。
前回の紹介ページはこちら↓
Speedy100でステンレス製マグカップにマーキングする (2021.02.09更新)

 ではまずspeedy300、speedy360、speedy400を使用した場合の加工方法についてから。
1.5inchレンズの焦点距離(ヘッドのレーザー光出口から加工対象物の加工を行う面までの高さ)はspeedy100よりもspeedy300~400の方が短く、今回使用しているステンレス製マグカップでは持ち手の部分(約30㎜)がヘッドに衝突してしまいます。
 それは1.5inchレンズだけでなく2.0inchレンズも同じで、焦点距離に対し約30㎜の持ち手の高さ(凸)はロータリーアタッチメントでの加工は出来ず、加工台に直接置いての加工も凸部付近への加工は様々な条件が付いてきます。
 しかし、このような時は2.0inchCL(クリアランス レンズ)を使用するというがあります。

左/2.0inchCLレンズ 右/2.5inchレンズ

 このレンズは通常の 2.0inch レンズと焦点距離は同じですが、取り付け位置が変わることにより焦点位置が 約12㎜程遠くなる特殊レンズになります。
その効果により凸部の高さが高いものでもぶつかることなく加工することが出来ます。

 また、2.0CLレンズの他に2.5inchレンズもあり、こちらも1.5inchレンズや通常の2.0inchレンズよりも焦点距離が10mm程長いため、高さ30mm程度までの凸があるものの加工を行うことが出来ます()。
 ただし、2.5inchレンズは2.0inchレンズよりも、2.0inchレンズは1.5inchレンズよりも焦点距離が長い分、細かな文字や細い線を彫刻するのには不向きになり、カット時の切り口(溝幅)も少しずつ太くなります。

焦点距離の長さ:短い=1.5inch<2.0inch<2.0inchCL<2.5inch=長い
小さな文字、細い線など:OK=1.5inch>2.0inch=2.0inchCL>2.5inch=不向き

Speedy400用2.5inchレンズの焦点距離(凸部許容範囲)について
NEW Speedy400(S4-3XXX以降)は凸部高さ30mm程度まで、旧Speedy400(S4-2XXXまで)は25mm程度までになります。

※上記説明の焦点距離(ヘッドのレーザー光出口から加工対象物の加工を行う面までの高さ)はすべてコーン(ヘッド先端 三角形のパーツ)を外した状態での説明になります。
凸部への接触、衝突が予想される場合はコーンを外しての加工もOKですが、加工対象物の素材やレーザー出力設定により火が出やすくなる、煙や粉塵でレンズやミラー、加工対象物が汚れやすくなるなどのことがありますので、加工中は平常時以上にレーザー機を注視し、レンズやミラーの汚れチェックおよび清掃を行ってください。


 そして、speedy100~400共通の奥の手について。
JC(ジョブコントロール)の「レーザーヘッド位置を移動しない」機能を使用し、凸部を回避して加工を行う方法です。
但し、この方法は確認を怠るとレーザー機の故障や加工対象物の破損に繋がりますので、細心の注意を払う必要があります

◆注意事項
必ず入念に確認してください
・加工用データと加工対象物の加工範囲のサイズおよび加工位置
・加工対象物の凸部および加工範囲周辺の形状
・加工時のレーザーヘッドの軌道(加工時レーザーヘッドに接触するもの、箇所はないか
・加工開始時のレーザーヘッド位置(加工範囲内にレーザーヘッドを置いておく)

予め加工パラメーターのパワーを「0」にし、加工台を下まで下ろした状態でレーザー加工をスタートさせ、どういう軌道でレーザー機やロータリーアタッチメントが動くかを確認するとより安全です。

◆Job Control 設定手順(trotec engraver v10.x.x以降
作図したデータをJCに移行後、JC画面上部のツールバーより『設定』→『オプション』を順にクリック。

★ロータリーアタッチメントを使用する場合
左側のツリー内『アクセサリー』をクリック
出てきたメニュー内「加工終了時のロータリー位置」欄で「移動しない」を選択
選択後「OK」をクリック。

★加工台に直接置く場合
左側のツリー内『process option』をクリック
出てきたメニュー内「加工終了時のレーザーヘッド位置」欄で「移動しない」を選択
選択後「OK」をクリック。

trotec engraver v9.x.xの「加工終了時のレーザーヘッド位置」はレーザー彫刻機本体用の設定のみ。ロータリーアタッチメント用の設定はありません。
~設定手順~
作図したデータをJCに移行後、JC画面上部のツールバーより『設定』→『オプション』を順にクリック。
左側のツリー内『ハードウェア』→『レーザー彫刻機』をクリック
出てきたメニュー内「加工終了時のレーザーヘッド位置」欄で「移動しない」を選択
選択後「OK」をクリック。

 「移動しない」を選択することにより、文字通り加工終了後レーザーヘッドが加工を終了した位置で止まるほか、加工開始もレーザーヘッドを置いている位置からデータの始まり位置に移動するのみで原点(0,0)に戻らなくなります。
こうすることで、加工対象物の凸部にレーザーヘッドが衝突しないように加工することが出来るようになります。
但し、前述『◆注意事項』にも書いた通り、加工中に加工の妨げになるもの(レーザーヘッドに接触・衝突するもの)はないか入念に確認し、加工開始前もレーザーヘッドを加工を行うデータが有る範囲内に置くようにしてください。


 今回説明した2つの加工方法は、加工対象物の形状や加工対象物の加工を行う場所、加工対象物の加工を行う場所に対しての加工用データのタテ・横サイズなどにより使い分けする他、2つを組み合わせての加工ももちろんOKです。
また、加工対象物自体が湾曲している、凹凸がある場合の他、同じ加工を複数回繰り返したい時などに作成した治具が加工対象物よりも高さ(凸)があったり、加工中の加工対象物のずれや揺れ防止のために重しを置いた時などにも利用できる方法です。
必要に応じてご活用ください(^-^)b






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