和紙でブックカバーをつくる

今回は和紙を加工しブックカバーを作ります。



 今までにも何度か紙の加工については紹介してきましたが、今回は和紙2枚を加工し、ブックカバーを作ってみたいと思います。


まずはデータから。

・1枚は和柄のデザインカットと外周(ブックカバーの実寸)カット、もう1枚は外周カットのみです。
・柄の黒と黄緑は彫刻、青と水色は切抜き、外周は赤の線でカットです。


加工に進みます。

●使用レーザー機その他:
・Speedy300 60w
・1.5inchレンズ
・細口コーン

●用意するもの:
・和紙 2枚(今回の使用は白色無地1枚と橙と黄のグラデーション柄1枚の計2枚)
・スプレーのり
・スティックのり(スプレーのりで貼り合わせる前の仮止め用。無くても可)
・新聞紙(和紙を貼り合わせる時の机や床の汚れ防止用。無くても可)
・金属の定規など錘(おもり)になるものもしくはマスキングテープなど仮止めできるもの(集塵機やエアーアシストの風で紙が飛ばないように押さえておきます)

●加工パラメーター:
・白色無地(厚口)★
彫刻(抜):パワー/75 スピード/80 PPI/1000
彫刻:パワー/55 スピード/80 PPI/1000
カット:パワー/15 スピード/0.4 PPI/1000

・橙と黄のグラデーション柄(薄口)★
カット:パワー/15 スピード/0.4 PPI/5000

★便宜上(厚口)、(薄口)と表記したものの今回使用した和紙はほとんど厚みに差が無かったため同じパワーとスピードでカットできましたが、加工を行う際は実際に使用する紙でテスト加工を行い、使用する紙に合ったパラメーター設定で加工を行ってください。

★今回カットスピードを0.4で行っていますが、動画撮影用に遅めに設定しています。
一辺10cm以上の四角形など大きく単純な図形のみのカットであれば0.6~1.8などもう少し早くてもOKです(※)。
ただし、スピードを上げた分パワーも上げることを忘れずに。

※上記は加工材料が薄い紙の場合です。
使用する材料やその厚み、カットする図形の大きさ、単純さなどにより異なります。

●ポイント
・Illustratorでパターンスウォッチを使用して柄を作成した時は分割・拡張を行う
パターンスウォッチ以外にもパスファインダーやマスクを使用した場合、RubyもしくはJCに移行した時エラーの原因になることがあるため注意が必要です。

・Illustratorで作図した時、線の『位置』は『中央』で
カット線の位置を『内』や『外』で作成すると、RubyもしくはJCに移行した時、画面に正しく表示されずカットが出来ない原因になります。
新たに作図した時のほか、Web用などレーザー加工とは別の目的で作成したデータを流用した時には要注意です。

・今回はデザインカットを『彫刻』モードで加工
カットは本来『カット』モードで切抜きを行ますが、今回は加工材料が薄い紙のため『彫刻』モードで紙が貫通するまでパワーを上げ、切抜きを行いました。
こうすることで『カット』モードで行うよりも細かな切抜きが出来たり、細かな切りくずが出ないので後掃除の手間が省けるなど利点があります。
しかし、この方法が有効なのは薄い紙程度で、ボール紙(=厚紙、コートボール、段ボール原紙など)や紙以外の材料に行うと抜けた部分の上下(材料の表と裏)のサイズや形状が異なる、焦げる、焼ける、溶けるなどのケースが多いため、薄い紙の加工以外にはおすすめできません。

・和紙は繊維にムラや凹凸があるものが多いため注意
手すき和紙など紙面に繊維の束があるものや箔、紙片などが混ぜ込まれたもの、凹凸加工や皺のあるものは1枚の紙の中でも部分により加工に適した出力が異なることが多いため、パラメーター設定を慎重に行う必要があります。
また、和紙表面にコーティングが施されているもの、樹脂と貼り合わされているものなども、コーティング材(剤)や樹脂と紙との2層構造、もしくは接着剤と合わせて3層構造になっているため、レーザー機で加工を行うと断面が焦げる、茶色く変色する、コーティング部分が縮む、剥がれるなどすることが多いため不向きです。
これらのことから、できるだけ繊維に偏りがなく平面で、本来の和紙の原料となるもの以外のものが含まれないものを加工材料として選ぶのもポイントと言えます。

・レーザー機で加工すると紙は切断面や彫刻溝(凹)、その周辺が茶色く変色(薄褐色~濃褐色の焦げ色が付く)することが多いです
そもそもレーザー機での加工は火で焼いているのと同じですので、特殊紙等で焦げ色が目立ちにくいものもありますが、一般的に販売されている紙は往々にして切断面や彫刻溝に茶色く焦げ色が付きます。
焦げ色が気になる場合は真っ白や薄い色目の紙は避けた方が無難です。

・カットのスピードは1.0程度以下に設定する(※)
数値は上限100まで入力できますが、ある程度以上はレーザー機の制御がかかるため入力したスピードでは動かないほか、直線が線がブレる、〇が楕円になるなど、デザインカットがいびつになる原因にもなります。
その他、微細なデザインカットを早すぎるスピードで行うと切りくずや必要なパーツまでもが飛び散り加工の妨げになる、駆動部分のパーツの消耗が早くなるなどの要因になりますので、スピードを必要以上に上げすぎない事もきれいな出来上がりへのカギになります。
※使用する材料やその厚み、ご使用のレーザー機のW数にもよります
(例)60W機で3mm厚のアクリル板に直径3mmの穴をカットする場合、0.3~0.4程度までが理想的 など 

・必要なパワーが不明な場合はスピードを固定した状態で低いパワーから徐々に上げていく
スピードを例えばカットで0.4で固定した場合、それに対してパワーがどれぐらい必要かを低いパワー設定から複数回テストを行い、取り敢えずカットできれば断面には拘らないのか、カットできることは前提で断面の見栄えも重要なのかなど、自分の理想の加工ができるパワーを探ります。

・薄い紙などの場合特に、錘(おもり)を置く、テープで貼り付けるなど加工対象物が動かないように固定する
3mm以下のアクリル、木(MDF含)、薄い紙などは、集塵機やエアーアシストの風により加工中にめくれ上がる、飛ばされる、加工中の熱で反る、などすることがあります。
錘(おもり)を置く、テープで貼り付けるなど、加工対象物が動かないようにしっかりと固定し加工を行ってください。
また、薄い紙の場合は特に、波打ちやヨレが出来、焦点が合っていない部分が出来やすいので、丁寧に平に伸ばしてから加工を行うように注意が必要です(※)。
※焦点が合っていない部分があると、彫刻が浅いところと深いところが出来る、カットが貫通している部分と貫通していない部分が出来るなど加工にムラが出来るほか、溶ける、焦げる、火が付くなどし加工対象物がダメになってしまうことも。

・加工中は絶対に目を離さない
加工対象物が何であるか、パラメーター設定がどうであるかに関わらず、レーザー機稼働中は絶対に目を離さないようにし、火が付いた場合は燃え広がる前に速やかに消し止めるよう注意してください。
念のため、レーザー機近くに水の入ったペットボトルもしくは消火器(※)の常設に努めてください。

※消火器 詳しくはこちら↓
火が付いた!何を使って消火する!?(2024.07.18更新)

●加工イメージ動画

・撮影用にレーザー機の蓋を開けて加工を行っています。実際に加工する際は必ず蓋を閉じて行ってください。

●出来上がり

『彫刻』モードを使用しての和紙への彫刻、抜き加工ともに良い感じに出来ました(^^♪
抜き(写真右側、上から1つ目、2つ目)は細部まで繊維の残りも無い状態で抜け、黒い下敷きが見えており、彫刻(写真右側、下から1つ目)は薄く紙が残った状態で、黒い下敷きが透けて見えています。

・スプレーのりで2枚を貼り合わせて完成です。

デザインカットを行っているためブックカバーとしては実用向きではない感じですが、切り抜いた部分から下地の黄色と橙色の紙が見えるほか、白い紙から下地が透けて見え、華やかな雰囲気のブックカバーになりました。


本に被せてみると、やはり紙が2枚とも薄いため白い紙の下の紙の黄色・橙色のほか、本の表紙の柄(濃い灰色っぽく見えるあたり)が少し透けて見えています(;´∀`)

・あわせて栞も作ってみました。


・ちなみに下地の紙の色を変えるとまた違った雰囲気になります。

緑色や赤色がメインの、華やかではありませんが地味とも言えないような色遣いのもの。
くすんだ色味の緑や赤い色がカットの隙間から見え、落ち着いた雰囲気に。


●加工用データ

https://fire.st/RMSyzZ1

ダウンロード後解凍してご使用ください(*^-^*)



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