湾曲したガラス板に彫刻

 今回はロータリーアタッチメントを使用し、湾曲したガラス板の弧の外側に彫刻を行ってみたいと思います。



 ガラス板(鏡)や瓶への彫刻は以前から数度にわたり紹介してきましたが、今回は湾曲したガラス板への彫刻を行います。
 但し、ガラス板の弧の内側への彫刻は焦点距離や加工方法の問題により困難なため、弧の外側への彫刻のみ有効な方法の紹介となります。

●治具について
 ロータリーアタッチメントを使用しますが、今回使用したガラス板の形状や大きさではロータリーアタッチメントの基本形のままでは加工し辛い為、下写真のようにコーン部分に手を加えました。


◆必要なもの
・3mm厚アクリル板(MDFなどでも可。但し、反りの無いもの) 下写真内C、D用
・2mm厚アクリル板(こちらもMDFなどでも可。反りの無いもの) 写真内B用
・φ10mmの金属製ナット
・モンキーレンチ
アクリルパイプ(彫刻を行うガラス板の弧の内側に沿う径のもの)
※塩ビはレーザー加工を行うと黒いススが多く出る他、とても強い臭いも発しますので不向きです。


① レーザー機でアクリル板をカットし、B、C、D 計3枚の円形の部品を作成します。
3枚の内、Bは③で挟むアクリルパイプの内寸丁度の大きさです。
※アクリルパイプの内寸よりも小さいまたは大きいと、その分、中心からのずれが生じやすくなるので、慎重な計測が必要です。
レーザーは材料を溶解または燃焼させてカットします。
カット時なくなる部分の幅も考慮に入れ、外周(アクリルパイプと接する周)は僅かに大きめに、内側の穴(ロータリーの軸に通す穴)は僅かに小さめにデータを作成するのがポイントです。
 ★実際の溶け幅は不要な板をカットし計測してください。

② ロータリーアタッチメントの向かって右側のコーンを外し、ロータリーの軸に①で作成した円形のアクリル部品をD、C、Bの順に通してAの金属ナットで固定します。
※固定する際はナットをモンキーレンチでしっかりと締めてください。
締め方が緩いと、ロータリーの軸と円形のアクリル部品が空回りし、彫刻ずれの要因になります。

③ 固定した円形のアクリル部品と基のままの状態の左側のコーンの間にアクリルパイプを挟み固定。
こちらも加工中に緩まないよう、しっかりと止めてください。 

 
 上記で出来上がった治具のアクリルパイプの部分に両面テープでガラス板を固定し、彫刻に進みます。

●必要なもの
・ペーパータオルまたは習字用の半紙(※)
・霧吹きまたはトラベル用小分けボトル(中身は水道水)
・両面テープ(ガラス板固定用)
・乾いた布またはペーパータオルなど(彫刻後ガラス板を拭く用)

●使用レーザー機 その他仕様
・Speedy300 80w機
・2.0inchレンズ
・上記で作成した治具を取り付けたロータリーアタッチメント
・集塵機の吸引力%は低め(100%弱程度)に設定
(ペーパータオルの乾きを遅くするため)

●パラメーター設定
・DPI:1000
・加工モード:標準
・カラー調整:ディザ生成
パワー:70 スピード:25 PPI:1000 エアーアシスト:OFF
※習字用の半紙を使用する場合は少し出力を上げて(パワーを上げるまたはスピードを下げる)ください。


 先ずはデータから。

 Photoshopで描いた画像をCorel DRAWで読み込み、トレースして作成しました。
この時、ノードが多ければ減らしておきます。(※)


 データはガラス板の外周(弧の外側、加工を行う面)に合わせたタテ横サイズです。
今回はイラストと文字を形成する線の内側部分を白、線と背景を黒にし、ガラス全体を彫刻、線と背景の部分が彫刻無しの状態になるよう作成しました。


●加工イメージ動画です。

※動画撮影用にレーザー機のフタを開けて加工しています。
実際に加工する際は必ずフタを閉じて行ってください。

※加工中はレーザー機の傍から離れないでください。

※ペーパータオル(半紙)が乾くと火が出る恐れが高くなります。
乾きかけたら早め早めにレーザー機を一旦停止させ、水の補給を行って下さい。


●出来上がり
 加工終了後 治具から外し、ペーパータオルの切れ端と水分を拭き取って完成です。

レーザーを照射した部分の目が揃い、白っぽい擦りガラスのような仕上がりに。
白い部分を触っても大きなザラザラ・パリパリ感がほぼなく、指にも殆ど残りません。
 水で濡らしたペーパータオルがポイントです。(※)




※参考
ガラス彫刻に水が必要なワケ ~その1~ (2017年7月3日掲載)

データが移行できない!?時の対処法 ~ ノード・パスの減らし方 ~(2018年5月8日掲載)

ガラスへの彫刻 ~ペーパーについて~ (2017年6月8日掲載)







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