レリーフモードで木にレリーフ彫刻

 今回は木板に『レリーフモード』を使用してレリーフ彫刻を行います。

 以前にもレリーフモードを使用してアクリルや紙、木への彫刻を紹介しましたが、今回は木への彫刻2回目、グラデーションのあるデータ(イラスト)を使用しての彫刻を行いたいと思います。

★以前のページはこちら
・木製コースターを作る ~加工編~(2016.06.09更新)
・木製のコースターを作る ~データ作成編~(2016.06.01更新)
・紙製コースター作成 part2(2015.10.26更新)
・レリーフモードを使っての彫刻・切抜き ~speedy300~(2015.08.19更新)


 まずはデータから。

 今回は3D CADを使用しレリーフデータを作成、.bmp画像ファイル(※)にしました。
画像(出来上がり実寸)サイズ約75×75mm。
デザインはもうすぐバレンタイン!ということでバレンタイン柄です。

 レリーフ彫刻用データはグレースケールのグラデーションまたはベタであればOKなので、PhotoshopやPhoto-Paintなど画像作成ソフトの他、IllustratorやCorel DRAWなど図形作成ソフトで作成したデータ、手描きをスキャナーで取り込んだ画像でも使用できます。
 但し、図形作成ソフトで作成したグラデーション有のデータはデータが重くjobcontrolに移行するのに時間が掛る、正常に移行されない(エラーが出る)などの場合がありますので、ラスタライズ(Illustratorの場合)もしくはビットマップに変換(Corel DRAWの場合)を行うか、別名で保存にて.jpgや.bmpなど画像ファイルとして保存したデータの使用をお奨めします。
 また、手描きのイラストを使用する場合は、描いた色の濃淡や紙の質感などがスキャナーで読み込んだそのままデータとして出力されるので注意が必要です。

※画像ファイルについて
・.jpg、.bmp / 推奨。但し、解像度300dpi以上のものを使用してください。
 (参考 網点データで写真彫刻 1 ~彫刻に適した写真とは?~(2017.07.26更新)
・.gif / 表現できる色数が少ないため、グラデーション彫刻用データには不向きです。
・.png / .jpg、.bmpよりもデータサイズが重くなりがちなので不向きです。

グラデーションデータについて
今回、当初作成したデータは上図左のような状態でした。
3D CADを使用したこともあり、良い感じのグラデーション(凹凸)が出来たと思っていましたが、いざ加工してみると上図中央および右の写真のように。。。
 木板は以降(↓)説明で使用している【今回使用したもの】と同じ木板、パラメーターも同じです。
 しかし、白い(淡い灰色)部分と黒い(中~濃い灰色)部分の差が激しく、何だかよく解らない、残念な仕上がりになってしまいました。

 グラデーションのあるデータはレリーフモード用、標準モード用問わず、必ずテスト彫刻を行い、出来を確認しながらの加工をお奨めします。

 
 加工に進みます。
使用レーザー機その他
・レーザー機 Speedy300 CO2  80W
・2.0inchレンズ
・細口ノズル

その他用意するもの
・木板(※)
・歯ブラシ(加工後水洗い時に使用します)
・乾いた布(加工後水洗いしたものを拭きます)

◆パラメーター
加工モード:レリーフ
DPI:1000
パワー:100 スピード:20 PPI:1000 ※1
彫刻方向:下から上へ(bottom)またはボトムアップ ※2


※1
以降(↓)でも紹介していますが、使用する木板(種類とその硬さ)ごとに加工の出来は異なります。
記入しているパラメーターのパワーとスピードは今回使用した木板に対しての出力ですのであくまで目安とし、実際に加工を行う際は予めテスト加工を行い、使用する木板に合った出力の調整をしてください。

※2
jobcontrolバージョン10.6以前
jobcontrolソフト内上部ツールバーより『テンプレート』→『テンプレートの設定』にて
『下から上へ(bottom)』選択

jobcontrolバージョン10.7以降
jobcontrolソフト内『材料テンプレートの作成』→『方向』にて『ボトムアップ』選択

木板について
・厚みと反り、波打ち
 今回、厚み約18mm、16~33mm幅の木材を貼り合せた全幅約80mmの木板を使用しました。
 レーザー機で加工を行う場合、長時間もしくは高出力、またはその両方で彫刻やカットを行うと、厚みの薄い材料は特に、熱により反りが発生します。
 熱による反りは木板に限らず、MDF、アクリル、金属板などほぼすべての材料で多かれ少なかれ起こりますので、加工を行う内容により注意が必要です。
 
 また、木材の場合特に、貼り合せ(MDF含)、無垢問わず10mm以上度厚みがあるものでも、木材自体の乾燥やレザー加工での熱による反りや波打ちが見受けられます。
 この反り、波打ちにより、加工中に加工対象物がガタつく又は移動する、焦点のズレが起こるなど、加工の出来に影響が出る場合がありますので、加工前に材料のチェックを行う、ずれなどが起こりそうな場合は治具の設置や動かないようにするための工夫が必要です。
 また、加工中に反りが発生すると、レーザーの焦点がずれ、彫刻した文字や線の幅などが太くなる、ボケる、カットが途中から切れていないなどの現象が起こる他、失火に繋がる場合もありますので、加工中は必ずレーザー機の傍に居るようにし、目を離さないでください。

・その他注意点
 高出力(パワーが強い、スピードが遅い、またはその両方)で加工を行うと、黒く焦げる他、燃える(火が出る)ことがあります。これは木材に限りません。
 また、木材にレーザーを同じ場所に複数回照射しても、レーザー光が当たった部分が炭化してしまっているため、2回目以降はほぼレーザーが入りません。(炭は切れません)
 なので、一度レーザーでカット線を入れた部分に2度3度同じようにカット線を入れても底までは切れず、出力を上げると何とかカットは出来たが断面がボロボロ、という結果に繋がります。

・木目
 木材にレーザー機で加工を行う時、木目や硬さ、乾燥具合、ヤニ(油)の多さが重要なポイントになります。

【今回使用したもの】
16~33mm幅板の貼り合せ、全幅約80mm板。
 上記のパラメーターで彫刻溝(凹)最大1.5mmほどになりました。 
 年輪による細かなスジが無かったため目立ってボコボコ波打った感じにはなっていませんが、木の柔らかい部分は少し深く、硬い部分は少し浅く、なだらかな凹凸が出来ています。
 また、木の継ぎ目も僅かに凸になっていて、これは貼り合せ時の接着剤によるものと推測できます。
 ちなみにこの木板は数年前から事務所内で保管していたもの。
特に室温・湿度等気に掛けず窓際に放置していたため、購入当初よりは黄色っぽい褐色に変色し、乾燥も進んでいると思います。

【年輪によるスジが多いもの】
無垢の板、厚み約20mm。
 【今回使用したもの】と同じパラメーターで彫刻溝(凹)最大2.2mmほど、木の硬い部分は0.9mmほど。
 こちらは1か月半ほど前にホームセンターで購入、レジ袋に入れて日陰に置いていました。
 フシのある部分は除いたものの、年輪によるスジが多いため、レーザー彫刻による凹凸以外に木の硬さの加減(年輪の濃い茶色の部分は白い部分よりも比較的硬い)による凹凸が出来、彫刻した部分が全体的に波打っているように見えます。

 レーザー機での加工は、年輪や木の硬い部分、柔らかい部分などを自動で見分けながらの加工は出来ないため、同一のパワーとスピードで硬い部分は浅く、柔らかい部分は深く
彫刻されます。
 よって、木板で均一(同一)な凹をつくるのは容易ではなく、木材の種類や年輪、硬さの具合など細かくチェックし、同一のデータで複数の加工を行う場合は特に、パワーやスピードを調節する必要があります。

加工後の処理について
 レーザー機での加工を行うと、彫刻を施した部分にはヤニ(油)や彫刻カス(木のホコリ、粉塵)が付着し、それが味(見た目の良さ)になる場合もありますが、取りたい場合には、サンドペーパーで磨くかまたは水やアルコール等で拭き取る、洗い流す必要があります。

【加工終了直後】
今回は加工方向に『下から上へ(bottom)/ボトムアップ』を使用したので彫刻カスの付着は目立たないものの、ヤニによる汚れ(黒っぽい茶色に見えるテカリやベタベタ)があります。

【洗った後】
流水と歯ブラシで洗い流しよく乾燥させると、染みついたヤニによる汚れは多少残っていますが、テカリやベタベタは取れ、加工直後(上写真)から比べると全体的に白っぽい色に仕上がりました。


◆イメージ動画


★撮影のため、レーザー機のフタ(上面パネル)を開けています。
実際に加工を行う際は必ず閉じて行ってください。
★加工中は必ずレーザー機の傍に居るようにし、目を離さないでください。


◆出来上がり
素朴な雰囲気に仕上がりました。
 この後、カラーの塗料で着色するも良し、クリアで塗装するも良しという感じですが、今回はこのままで完成です(^_^)b




 
 
 

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